パートナーを選ぶ時。生まれも育ちも違う二人が、初めて一緒に生活をすることになって、お互い戸惑うことが多々あるでしょう。同じ国の相手でもそうなのだから、異国の人だったら、風土も文化もまったく違うのだから、さぞかし、と思います。今回の永井さんも文章は、その辺りを垣間見ることが出来て、興味深いです。
太陽の夏、友人Aさんはフィンランド人男性とめでたく結ばれた。だんなさんは日本料理をつくるのも、食べるのも大好きな人だ。遊びにいくと、二人で台所に立っているという微笑ましい光景をよく目にする。そんな二人だが、お互い相手の行動に、驚きと戸惑いを隠せないこともあると語ってくれた。
まず、奥さんから。
たとえばだんなさんはシャワーを浴びた後、速攻で靴下を履く。これが、日本人の妻にはちょっと許しがたい行為にみえてしかたがない。なんといっても、それは湿気大国ジャパン出身者である。「お風呂上りに靴下をすぐに履くなんて、まるで水虫さんいらっしゃいといっているようなものよ!」と、最初はやめさせようと四苦八苦したらしい。
が、かたやだんなさんは"カラッと乾燥ならびに冬はさむいよ"王国の出だ。そこでは部屋にタオルを濡れたままほっておいても、紙のようにパリパリに乾き、長い冬には、冷えることこそ命取りなのだ。母親から、「早く靴下を履かないと、風邪をひくわよ!」と、きっと何度も言われて育ったことだろう。一分一秒でも足先を早く暖めることの大切さは、もうすっかり染み渡っている。二人はフィンランドに住んでいるし、後日、奥さんは気にしないことに決めた。
一方だんなさんにとっても、妻との間でのりこえなければいけない壁がある。それは、卵ごはんのことだ。自分の妻が生卵をごはんにかけて食べてしまうことに、はじめ驚愕の表情を隠せなかった。そう、フィンランド人を前に卵ごはんを食べていると、「サルモネラ菌がいるかもしれないよ、大丈夫?」と不安げな表情で見つめられることがよくある。
奥さんは、"卵とご飯のうみだす絶妙なハーモニー"を連れ合いにも理解してほしいと、切望していた。何度か、「あなたもいかが?」と誘ってもみたが、いまだ成功していない。
だが彼は最近、すき焼きと生卵の関係はみとめてきたのだそうだ。"卵ごはん"への道を歩みだす日もそう遠いことではない(かもしれない)。
(永井涼子)
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