CRAFT SPACE わのBLOG

毒きのこ

2011年10月 5日 09:51

 毒を食らわば

 

前回に続いて、今日もキノコの話題です・・・。

秋口なると、書店によくキノコの本が平積みにされるか、あるいはキノコ本コーナーができあがっていたものです。いろいろな種類の本がありました。ポケットで持ち運べるものから参考書タイプのものまで。なかでも、キノコの美味しさについて星印(☆)で表しているものはけっこう面白かったのです。

 

 たとえば、最高点の星5つはカンタレッリについていたけれど、松茸には2つしかついていないのにはびっくりしました。じつは、日本で採れるものと同じ種類の松茸が北の地域にはえています。ただあまり、フィンランド人に好んで食べられてはいないのだとか。松茸はフィンランド語で良いにおいのするキノコという名前なのだけど、どうも敬遠されているようです。

 いつの日か森で、「松茸しかとれなかったよ、トホホ。捨ててやる(!?)」なんて言っているフィンランド人に出会えたら、喜んで引き取ってあげたいものです。と、永谷園のお吸い物くらいしか松茸経験(経験と数えていいものか・・)のない者は浅はかな夢をみているのでした。

 

松茸の地位はそんなに高くないのに、とても人気のある毒キノコがあります。春先に生えてきます。フィンランド語でコルブァシエニといい、直訳すると「耳キノコ」という真っ黒なうねうねしたキノコです。猛毒があって、そのまま食べると肝臓機能が麻痺し、死に至ってしまうこともあるという恐ろしい代物です。 

http://users.jyu.fi/~kalasalo/ope/opteht/op2/materiaali/esimerkin_tiedostot/korvasieni/

 もちろん、フィンランド人にだけ猛毒を受け付けない細胞やDNAがある!という訳ではなくて、手間ひまかけて毒をとります。一握りのキノコに対して、大鍋いっぱいの湯に浸し、そして冷水につける。この作業を最低でも3回やらなければいけないそうです(なかなか年季のいる難しい作業とのこと、間違っても素人がひとりでやってはいけないと、フィンランド人のおばさんに口を酸っぱくしていわれました)。

 

 市場でも売っていて、何度か買ってみようかと思いをめぐらせたのですが、結局、実行にはいたりませんでした。万一毒にあたってしまったら、「よっぽど食べてみたかったのね、可哀相に。食べること大好きだったものね」なんていうのが、人生最後に下される我が評価になってしまうかもしれません。

毒を取ってまで「食べたい」なんて凄い情熱だなと感心していたのだけど、先日フグ風味のお吸い物(あくまで風味だけです、残念ながら)を飲みながら、ハッとしました。「あ、ここにもそんな人たちが・・・。」

(永井涼子)


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