秋になると、紅葉が待ち遠しくなります。
そんな"紅色"、一色の刺繍にフィンランドで出会いました。フィンランド語でkäspaikka(カァスパイッカ)といい、フィンランド東部の伝統的な手芸です。綿や麻の布地に、赤い糸だけで縫っていくシンプルなものですが、どこか懐かしい感じがします。
古くから、女性たちは家事や仕事の合間をぬって作っていました。基本の模様は鳥と木なのですが、作り手の自由な発想によってさまざまな形になっています。似ているパターンはあるけれど、きっとまったく同じものはないのでしょう。鳥は、ずっと昔から使われてきたモチーフなのだそうです。卵を産むことから、"生"をあらわしているようです。木は、この地方の民間伝承から「生命の木」と呼ばれています。亡くなった人の魂がこの木をつたって、天へと昇っていくと信じられていました。
またこの地方(フィンランド東部)はロシアと隣接することからも、ロシア正教の影響が強い地域です。作品を見ると、鶏によく似た鳥の中に十字架が描いてあり、そんなところからも宗教的な意味合いがうかがえます。もともと、イコンの枠上を飾り、洗礼式には神父さんの手を拭くものでした。 他には、お客さんにナプキン代わりにあげて、パンくずなどが床に落ちないようにするという使い方もありました。あとは、お嫁入りの時には、お嫁さんが何枚も手作りでこしらえたものが、相手の親戚への贈り物となりました。これで、お嫁さんの手芸の実力のほどが計られたのでした。
伝統的な美しい作品は、ヴイルッキさんの手工芸博物館のホームページをどうぞ。http://www.kolumbus.fi/virkki-museum/kaspaikat.htm
ちなみに、週末「芸術の秋!」には遠く及ばないのですが、昔のフィンランドに思いを馳せつつ、作ってみましたkäspaikka。といっても、大きな作品の一部分だけ好きなところを抜き取った、とても小さなものです。たまに針が指に刺さりながらも縫い、鶏君が姿を現しました^-^ (永井涼子)
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