先日、フィンランドの女友達と国立の夜桜を見に行きました。
桜並木が、大学どおりに沿ってふわーっと咲き誇り、ちょうどいい時期でした。
その桜の木の下で、クリーム色の髪を肩までふんわりと下ろしている彼女は、まるで桜の精のようで、じつは私はちょっとドキドキしてしまいましたヨ。
それから、桜が見渡せる夜の喫茶店でお茶を飲むことにしまして。
桜を見ながら、近況やこれからのことを語り合っていたら、「異国にいて、恋しくなる景色は何か」というお題になっていきました。
彼女にとって、それは「水の景色」でした。
「フィンランドでは、いつも水の近くにいたから。実家の目の前に湖があったし、大学のあるヘルシンキでも、海がすぐ近くにあった。日本だと太陽は、山やビルに隠れてしまうけど、水ぎわだと、沈んでいくのも昇るのも最初から最後まで見えて・・・。」
「そうそう、あの静かにどこまでも広がる水平線は、海と空が交じり合って、なんだか心がすーっと穏やかになっていくんだよね」と、ひとしきり会話に花が咲きました。
「あなたは?」 と聞かれて、
「私は、桜を思っていたなぁ」と、言いました。
思えば、冬のフィンランドで、雪が木の枝にほっかりと積もっている景色が好きでした。それは、桜の花が満開に咲いているように見えたので、それがうれしかったのです。「森へ歩いて行って、そんな雪が降り積もった木を、眺めたこともあったんだ」と、彼女に伝えました。
喫茶店から、駅へと向かう帰り道、私には不思議なことがありました。
桜を見ていたら、フィンランドで降り積もっていた雪を今度は思い出してしまった・・・。
(永井涼子)
■コメントする