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わのフィンランド > 本 Book > 絵本 > Tuula Tiitinen
絵:Tuula Tiitinen
文:Esko-Pekka Tiitinen
217×260mm 32頁
2005年
Tammi刊
《版元在庫切れ》
ハリネズミはフィンランド人にとって、とても身近な動物です。少し郊外にある家だと、庭にハリネズミが現れたりします。ハリネズミが親子で歩いている姿を見ることもあるそうです。これはそんなハリネズミの親子を主人公にしたお話です。
野原でハリネズミの子が生まれました。おかあさんハリネズミは、小さな息子に「ふしぎ」という名をつけます。不思議、驚き、それは生きていくのにいちばん大切なものだから。ハリネズミの「ふしぎ」は、おかあさんに見送られて冒険の旅に出ます。おかあさんが持たせてくれたのは、たねを二粒と、金色のまつやにの玉。どちらも、おかあさんやおばあさんが小さいころに旅に出たときに、自分のおかあさんからもらったのと、同じものでした。
「ふしぎ」は、野に咲くつりがね草や、小鳥の親子や、ヘビに出会います。そのたびに小さなハリネズミは、美しさを愛でることや、困っているものに手を差し伸べること、そして怖れや尊敬の感情を学んでいきます。おかあさんから、「必要としているだれかにあげるのよ」といわれた二粒のたねは、疲れ果てた小鳥の親子に食べさせてあげました。やがて夜になり、真っ暗な森の中で「ふしぎ」が道に迷ったとき、まつやにの玉に反射した月の光が、進むべき方向を照らしてくれます。
光の道に導かれて家に戻った「ふしぎ」を、おかあさんはぎゅっと抱きしめます。「秋になればおまえは一人前のハリネズミ。来年には、おまえは自分の子を旅に出すのよ」その日が来れば「ふしぎ」は、小鳥の親子からもらったふわふわの羽や、つりがね草の青い花や、ヘビと向き合って流した涙を、自分の子どもに持たせてやるでしょう。小さい生き物が広いこの世界に生を享けるということの不思議を、やさしい言葉と挿し絵とで語った絵本です。
(古市真由美)