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わのフィンランド > 本 Book > 絵本 > Kristiina Louhi
絵:Kristiina Louhi
文:Riitta Jalonen
238×26mm 48頁
2006年
TAMMI刊
「からすの木」「わたしとママと夏雪草」に続く、少女サリを主人公とした絵本の3作目。物語は独立しています。
闇と雪に閉ざされた冬のフィンランド。クリスマスイブの日、赤いジャケットのサリは、1人でスキーをしています。フィンランドのスキーはクロスカントリー、すなわち歩くスキーが主流。サリは列車を見送り、凍った湖を越え、森へ入っていきます。しんとした森の中で、サリはいろいろなものを目にします。もう誰も使っていない小屋があります。岩を覆った雪を払うと、みどりのコケが顔を出します。森の中で、自分はたった一人の人間だ、サリはそう感じて、うれしくなります。洞窟の入り口から、サリは自分の名前と、天国にいるパパの名前を叫びます。パパが、フランスの有名な洞窟を見に行ったとき、洞窟の壁画の絵はがきを送ってくれたことを思い出しながら。サリはさらに進み、1本のもみの木のところへ行くと、小さなベルを取り出して、枝に吊り下げます。もみの木へのクリスマスプレゼントに、お小遣いで買っておいたのです。帰り道、サリはもみの木がついてきているように感じます。目に見えなくても、サリを守っていてくれるかのように。丘の上でサリが振り返ると、空が燃え上がります。緑と、赤と、青のオーロラが、雪を照らし、森を照らします。一瞬で消えたその光を、サリはたしかに見たのです。オーロラの輝きを受けた雪の上に、サリは自分のイニシャルSをストックで書きます。発音の難しいこの文字をちゃんと言えるように、小さいころは一生懸命に練習したものでした(フィンランド語のSはエスでなく「アェス」という感じ)。わたしはここにいる、1人で雪の上に立つサリの笑顔は、どことなく大人びて、生きる喜びに満たされています。
空を染めるオーロラの美しさは、北欧の厳しい冬を彩る贈り物のようなもの。ロウヒの挿し絵は、その魅力をぞんぶんに描き出しています。サリの物語は、この作品で完結します。
(古市 真由美)