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絵:Cara-Maria Knuutinen
文:Anna Gullichsen
220×272mm 30頁
2008年
TAMMI刊
《スウェーデン語原作のフィンランド語訳》
元気な少女サトゥは、夏休みをおばあちゃんの家で過ごします。おばあちゃんはフランス生まれ。ラベンダーやオリーブなど、故郷の南フランスを思いださせる植物を鉢植えにして、たくさん育てていますし、いろいろな野菜がとれる菜園も持っています。それに、亡くなったおじいちゃんは園芸家でしたから、家にはすばらしい花壇があり、野の花が咲き乱れる草原もすぐそばにあります。こんなすてきな家で、サトゥは花壇の手入れをしたり、おばあちゃんの話に耳をかたむけたりしながら夏を過ごすのです。ある日、草原に出かけたサトゥは、オークの木の枝に座って歌っている、小さな不思議な生き物に出会います。彼の名はピルス・コンムニス、略してピュッレ。ピュッレの本名、Pyrus Communis は、洋ナシの学名でした。ピュッレは洋ナシの木の精で、植物の世話を手伝ってくれているというのです。ピュッレと友だちになったサトゥは、植物に関するいろいろなことをピュッレから教わります。
ピュッレの木は、サトゥのひいおじいちゃんの代からこの家で大事にされてきた洋ナシでした。でも、おじいちゃんが亡くなった年に、ピュッレの木も嵐で倒れてしまったのです。ピュッレはサトゥに、ひいおじいちゃんや、おじいちゃんが、木をどんなに大切にしてくれたかも話してくれます。ピュッレの緑色の帽子は、サトゥがかぶっている、おじいちゃんの形見の帽子とそっくり。サトゥはピュッレを通して、おじいちゃんや、ひいおじいちゃんの声を聞いているのかもしれません。夏が終わりに近づくころ、悲しい出来事がありますが、それはただ悲しいだけでなく、生命の火は消えずに受け継がれていくことを象徴する出来事でもあります。
夏は北欧が最も輝く季節です。その夏をいろどる植物や生き物たちが、鮮やかな色合いで緻密に美しく描かれていて、幸せな気分になれる本。植物の特徴や世話のしかたが解説され、知識絵本としても充実しています。また、タマネギのパイや洋ナシのマーマレードといった、南フランス出身のおばあちゃんのレシピも載っています。
本全体が、さわやかなライトグリーンに包まれている印象です。洋ナシを思わせる色ですね。
(古市真由美)